アナログレコードを愛する人々第19回 DJ KEN-ONE

2022-02-09

アナログレコードに携わっている方にインタビューする企画です。 第19回は、ターンテーブリスト/スクラッチ愛好家のDJ KEN-ONEさんにインタビュー!

ーDJに興味を持ったのはいつ頃ですか?

そうですね、ちょうど高校2年に入る前ですから、17歳くらいでしたね。

ーキッカケは何でしたか?

中学2年生の時に深夜にダンス番組があって。ZOO(※1)とかが出てたりとか。
ちょうどダンス甲子園が流行ってた時だと思うんですけど、その頃にのめり込んだんですよね。

ーダンスにも興味を?

ダンスはテレビにかじりついてただ見るだけだったんですが、音楽の方も同時に格好いいなと思って。
その当時、輸入盤のCDを買える店が電車で40分くらいかけないと行けなくて、そこまで買いに行ってた思い出が。

ーDJにおいて一番影響を受けた人は?

Qbert(※2)とかにもめちゃくちゃ影響を受けたんですけど、最初にDJバトルを見に行ったのが’99年とかで、その当時(バトルに)出てた人たちですね。
当時市川市に住んでて、近くにコアファイターズというDJバトル集団のJIF ROCKさんっていう方が住んでたりとかして、すごい勉強させてもらったりしました。DJバトルシーンに詳しい方だったんで。

音楽を聴いてからだと、ポスターにあるD-Styles。Qbertと一緒にチームを組んでやってるスクラッチDJですね。
彼の音楽感とかに影響を受けました。一番影響を受けたのはD-Stylesですかね。

ーDJしている中で嬉しい瞬間はどんな時ですか?

大会とかじゃないんですよね。僕の場合は、スクラッチの技が一個一個練習してだんだん確実にできるようになっていったりとか、そういうちょっとした喜びが普段嬉しかったりとか。
あとはお客さんが喜んでくれたり、家でセット組んでそれを現場で披露して喜んでくれたりとかしてもらうとやっぱりめちゃくちゃ嬉しいですね。

ー次に楽しい瞬間を教えてください。

時々友達と集まってセッションとかして、自由な感じでスクラッチをお互いにし合ったりとか。そういう瞬間は楽しいですね。
最近だとポータブルプレーヤーを使って公園でやったりとか。外でできるって良いなっていう。

ー今まででDJ中に起こった一番のピンチは何ですか?

アナログから入ったのでやっぱりアナログでDJするの好きなんですけど、Serato(※3)でやるときにPCの問題が、、。古いんですよね(笑)2012年あたりのまだ使ってるんで。
最近家で仕込んでて、いきなり針の反応がおかしかったり、ノイズがバーって出ちゃったりとか。

アブダビいった時(※4)に、本番のちょっと前にPCがいつ変な音になるかわからないから、替えのPC用意してもらって、すみませんって感じだったっす(笑)

ーバトルやイベント前にしているルーティンなどはありますか?

僕の場合割と、セットをあらかじめ家で組んでくことが多いので
ひたすらそのイメージをここ(家)で練習して現場で披露するっていう。

あとは、やっぱりある程度部屋は綺麗にしておかないとやる気が起きないっていうか。

ー会場でやるようなルーティンはありますか?

指のストレッチやっちゃいますね。ポキポキってやったりとか。
プレイ前になるべくお酒飲まないとか(笑)

ーDJする上で一番大事にしていることは何ですか?

スクラッチでちゃんと伝えられるかどうか。
クラブってあんまりスクラッチやらない人が多いと思うんですけど
なるべくうるさくならないように気持ちよく…そこのバランスっていうんですかね。
やりすぎたりとか、あんまり自分を出さないことも大事なのかなって。

ライブセットでやる時は結構がっつりやるんですけど、曲と曲の合間のミックスとかだったらうまくフィットするように。あんまりうるさくガチャガチャしないように。

ーうるさくしないようにというのは?

曲として聴いて成り立っているように感じさせるっていうか。
演奏している感じっていうんですかね。
ラップするようにスクラッチするっていうか。フローを持たせるっていうんですかね。

ー今までで一番意外なDJとしてのお仕事は?

意外だったのは、3〜4年ほど前に、DJ IKU君(※5)からの紹介で一回だけNHKのEテレさんの教える系の番組にちょっとだけ出させてもらったことがあります。手元だけアップだったんで分かった人はあんまりいないと思いますけど(笑)

ーどういう相手に教えたんですか?

番組レギュラーで出てるアイドルの子たちにやってもらうみたいなのがありました。

あと、珍しかったのは、渋谷の街の音を素材にサンプリングして、3人でスクラッチして即興セッションみたいなことをしたのは面白かったですね。
電車とか交差点の音を使ったりしていました。

ーQbertとセッションした時はどうでしたか?

やっぱりむちゃくちゃ緊張しましたね。
Vestaxが三軒茶屋にあった時、定期的にスクラッチバトルをやっていて、ゲスト(審査員)でQbertがきた時に最後にみんなでセッションしようっていう時間がありました。

それともう一回、オタイレコードさんの渋谷のスクールに呼んでいただいた時に、Qbertが来日していてDJ宮島君(※6)と3人で2時間くらいスクラッチしたことがありますね(笑)
それはすごい貴重だったっていうか、ガチ稽古してもらったみたいな。

ー教えてもらうっていう感覚ですか?

教えてもらうというよりは、3人共ひたすら無言でスクラッチを交代で2時間ずっとやるって感じで。

ー2時間やってみてどうでしたか?

あっという間でしたね。やっぱ神なんでQbertは。
すぐに順番が回ってくるので次に自分がどんなスクラッチをしようか、っていうので頭がいっぱいでしたね。

ー終わるときはどのように?

あーどんなだっただろう。
そろそろ終わる?もういっか?みたいな(笑)

ー今後の展望は何でしょうか?

僕としては、大会に出るとかじゃなくて、別の方向からスクラッチの可能性を探れたらなと思っていて。スクラッチで曲を作ったりとか。スクラッチの音を重ねて曲にしたりとかっていう方向でもっと頑張りたいなっていうのは思ってますね。

あとはビートメイクですね。自分のビートにスクラッチをのせたりだとか。そういうことをもっと追求していけたらなと。

ーDJを始めた人やこれから始める人に一言お願いします。

ある程度うまくなったら、自分の好きな曲をどんどん聴いて、それをスクラッチに落とし込めるかどうかっていうのを追求してほしいなと思いますね。
僕も何人かの小学生に教えていて、なかには14歳でもうすでにスクラッチの大会でチャンピオンになったりしている子もいます。

僕はヒップホップから入ったけど、音楽を色々吸収する道は違うと思うので、その影響を受けて、最終的にスクラッチにどう反映させるかっていうのができたら良いかなと思います。

あなたにとってのアナログレコードとは?

今回は特別にスクラッチしているところを撮らせていただきました!

(※1)ZOO:1989年にダンス番組がきっかけで結成されたグループ。EXILEのHIROなどが所属していた。

(※2)Qbert:DJ Qbert。スクラッチの神と呼ばれている。1991年のDMC USAでソロチャンピオン、その後チームでDMC Worldチャンピオンの称号を2回獲得している。

(※3)Serato:PCを使用したDJプレイ用のソフトウェア。

(※4)アブダビ行った時:2018年、世界トップクラスのDJ総勢20名で結成されたオーケストラによるコンサートがドバイの美術館「ルーブル アブダビ」にて開催された。

(※5)DJ IKU:Red Bull THRE3STYLE DJ BATTLE JAPAN FINALで2度チャンピオンになるなど、Qbertら世界的DJからも高い評価を受けている。

(※6)DJ 宮島:2002年DMCバトル部門、2007年DMCシングル部門で日本チャンピオンに輝く。DJスクール宮島塾の塾長。

【プロフィール】
DJ KEN-ONE
東京都在住
ターンテーブリスト/スクラッチ愛好家。
90’s HIPHOPやDJ BATTLE、BEATシーンから多大な影響を受け、主にスクラッチを主体とした作曲、MIXを得意とする。

■SoundCloud
http://soundcloud.com/ken-one

■Instagram
https://www.instagram.com/djkenone/

■Twitter
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