アナログレコードに携わっている方にインタビューする企画です。
第20回は、DJとして世界中で活躍されているKO KIMURAさんにインタビュー!
—子供の頃はどんな音楽を聴いていましたか?
小学生の頃はロッキーのテーマなどの映画音楽や、CMで流れていた渡辺貞夫さんの曲やカシオペアみたいなフュージョンが好きでした。
他のクラスメイトはキャンディーズとかの流行りの曲を聴いている一方で、僕は皆が聴いているのとは違う音楽を聴きたいと思っていました。
もともとアニメのテーマ曲が好きだったのもあったので、映画やアニメのサウンドトラックにも嵌っていました。
—レコードを集めるようになったのはいつ頃でしたか?
小学生からそんなサントラを集めたりしていましたが、中学生くらいになるとYMOやクラフトワークを聴いたりしていました。
その後にはデュラン・デュランやカルチャー・クラブあたりが12インチというものを出していたので、邦版だけでなく輸入盤を買い出すようになりました。
僕の家は洋蘭の栽培をやっていて、そのお手伝いでお小遣いをもらってレコードを買っていました。岐阜の中でもだいぶ田舎の方だったので、レコードを買うには自転車を漕いで街の商店街まで出なければいけなかったり、輸入盤を買いに名古屋まで行ったりしてました。
当時はバンドをやりたかったのですが、楽器を習えるとこもなかったのと一緒に組んでくれる人もいませんでした。
それでも一応自分では詳しいと思っていた音楽関係の知識を使って何かやりたいと思っていたところ、HIPHOPという文化があるというのがあって、DJという音楽の表現方法があるのを知り面白そうだなと思いました。
当時自分も好きだったクラフト・ワークの曲をHIPHOPにしていたりして非常に興味を持ました。
—その後すぐにDJを始めたのですか?
高校生になると、PAの会社でバイトを始めて、そこの社長にサウンドシステムの事とか詳しい事を教えてもらってSL-1200MK2を1台とVESTAXのミキサーDSM309を買いました。
HIPHOPのことを取り上げている本でSHUREのカートリッジを使っているというのを見て、高校中盤あたりから所謂BEDROOM DJとしてプレイし始めました。
その頃は、ファッションと音楽は文化として一緒だったので、洋服屋にミックスを録音したカセットテープをあげてお店でかけてもらったりして自分のDJをプロモーションしていました。
DJをやり出して2年ほど経った頃、初めてお店でやらないかと声をかけてもらいました。
当時のDJはそのお店の社員になってDJという役職として週6日とか働いているのが普通でしたが、僕は幸運にも日払いでフリーランスのDJとして働くことが出来ました。
「君はディスコでかかるようなユーロビートではなく、変わった曲をかけるから、変わった人相手にDJをやらないか」と。
そこでお金を貰ったのが自分的にはプロとしてのはじまりでした。
—上京したのはいつですか?
レコードを買いに行ったり、ファッション関係のバイトで高校生時代から東京にはよく来ていました。
1年ほど名古屋でDJをしていましたが、中高生の時期にマルコム・マクラーレン(※)からファッションの影響を受けたのもあり、服飾の専門学校に行きたいと思い東京に引っ越して来ました。
でも運良くDJの仕事が忙しくなり、毎日のように朝まで回す事が出来るレジデントのパーティーがいくつも入ったのでで学校に通えなくなりフェードアウト、いつの間にか本職がDJになっていました。
(※ファッションデザイナー、セックス・ピストルズなどをデビューさせた仕掛け人)
両親としては、いつかは実家を継いでくれるだろうと思っていたのでしょうが、僕はそういう気持ちになれずにいました。弟が継いでくれたのでその当時の僕のプレッシャーは全部弟にいってます(笑
—その後のDJとしての活動はどの様でしたか?
20歳くらいからは本格的にDJで稼げる様になって、また20歳を越えるとNYのクラブにも入れるので、そのお金でニューヨークへ行ってレコードを買ったりしていました。
ニューヨークへは年に4〜5回行ったりして、どうしてもレコードが欲しくて家賃を滞納するほど熱中していました(笑
ハウスに出会ったのは東京に出てくる前に名古屋でDJしていた時に、そのお店の箱付きのDJの先輩がNYのクラブ(paradise garage)に行ってきた事が発端でした。その先輩にHIPHOPのブレークビーツのレコードを買ってきてくださいとお願いして買ってきて頂いたのですが、「コウ君、NYのクラブではHIPHOPはかかってなくてGARAGEかHOUSEという新しいジャンルの音楽が流行っていたよ。」といきなり言われて。
その先輩がNYで買ってきたハウスの曲はHIPHOPに比べると速くてキャッチーなので面白いと思いました。以前自分がBRITISH NEWWAVE系が好きだったのもハウスとは親和性が有りました。
85年に生まれたばかりの音楽というのもあってどんどん嵌っていき、レコード屋では棚にあるハウスのコーナーの曲を全部買占めるほどになっていきました。
コレクター癖があるので、レコードを買い集めては、これはこのプロデューサーが絡んでいるからとか、エンジニアやマスタリングがこの人だからこういう音になっているんだなとか、その歴史や人脈の系譜を辿ったり、またレーベルのレコード番号順に集める等もしていました。
—レコードはプレスによって音が違うと言われています。その辺はどう感じますか?
当時はイギリス盤の方が音的にはクリアで良いのですが、僕的にはアメリカ盤の濁った音の方が少しワイルドでアメリカっぽくてかっこいいなと当時は思っていました。
当時UKのパブリック・イメージ・リミテッドが最も良い音のするレコードは何かと追求していて、その結果12インチで片面10分以内の45回転の音が一番良いと言っていました。実際聴いてみるとクリアで確かに良い音でしたが、濁った音の方がアメリカのDJっぽくてかっこいいと思っていました。
今現在はヨーロッパ盤の方が垢抜けてる感もありますが。
—DJをやっていて嬉しい瞬間はどんな時ですか?
小中学生の頃、みんなに僕の好きな音楽を紹介したくて、放送委員や遠足のバスの中で聴いてもらったことがありました。その時にどうやったら自分の好きな曲をみんなに理解してもらえるかを考えていました。
有名な曲に頼らなくても車内が盛り上がったり、この曲何?とか聞かれると嬉しかったのを覚えています。
それがDJの選曲の醍醐味を感じる原体験になっています。
DJになった今も気持ちは同じで、音楽を通してお客さんとコミュニケーションが取れた時が嬉しいですね。
映画やアニメでも起承転結のストーリーがある様に、DJでも同じ様にストーリーを組み立ててお客さんと共有する。
そして、クラブに来たことで何か一つでも思い出を持ち帰ってもらうことが喜びです。
—DJをやるときに心がけていることはありますか?
必ず目の前にいるお客さんを感じながらDJをやることです。お客さんと会話する様な感じで選曲して考えるのが楽しいですね。
あとは、現場の機材やサウンドチェックや、ケーブル等にもこだわったり。勿論レコードを使ってDJする時はレコード針も自分の物を使うようにしています。
SHUREも使っていますが、90年代はSTANTONの680を使っていました。
—今後の展望を教えてください。
今はレコーディングをしています。以前はデジタルでアルバムを出していましたが、今後は本格的にアナログ盤もプレスして出したいと考えています。
また、ようやく海外へも行けるようになったので、今年はヨーロッパに行ってフェスやクラブでDJプレイも毎年行っていた2019年以前のように出来たらと思っています。
—これからDJを始める人へメッセージをお願いします。
DJは目の前にいるお客さんよりも圧倒的に音楽を沢山知らないといけません。なので音楽を出来るだけ多く聴いて内容をちゃんと把握しておく事が大切です。
ただ単に人気者になりたくてDJになる人も多いですが、音楽が好きでDJになりたいのであれば、いろんなクラブに行くことや、そこでどういうDJがどんなやり方をしているかを知る。そうしていくうちにDJとしての力が養われていきます。
あとは、人の言うことは話半分程度しか聞かないのが良いです。面倒な先輩がDJとかこういうものだとか、ミックスとはこうだみたいなことを言いますが、全部信じるとその人の二番煎じみたいになってしまいます。
どんなにマイナーな音楽でも、それがリリースされてるという事はそれを好きな人は必ずいるので、他人に媚びずに自分の好きな曲を自分の好きな順番でやった方が良いと思います。
DJにはある程度のセオリーはありますが、厳密なルールはないので、失敗を恐れずに新しいことに挑戦していく方が自分の個性が出て、また楽しんで長続きすると思います。
あなたにとってのアナログレコードとは?
【プロフィール】
KO KIMURA 木村 コウ
プロとしてのDJ歴は2023年で38年を迎える、ベテランながらもクラブ創成期から現在までシーンをリードし続けるトップDJ。
常に変化し、また前進するそのDJスタイルは国内のみならず海外にもファンは多く、国内外を問わず活躍中。
また、今現在はナイトクラブのみならず、楽曲制作やJ-WAVEでのラジオ番組、毎週木曜TOKYO MAADSPINも絶賛オンエア中。
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