


この度、JICOの完全オリジナルMMカートリッジ Clipper(クリッパー)を2025年10月1日(水)に発売いたします。
本製品は2024年10月より海外で先行販売しておりましたが、いよいよ日本国内でも発売を開始いたします。
『少し上質なモデル』
30年後をイメージして
JICOは1966年にレコード針の製造を開始して約60年。その間、ずっとメーカーのコピー品をサードパーティーとして製造してまいりました。
そして、2018年5月SHURE社がフォノカートリッジ事業からの撤退を発表。その3年後の2021年4月にSHURE44シリーズカートリッジのレプリカを発表、同年11月に交換針の完全レプリカを発表しました。
いずれも、完全レプリカを追求した製品です。しかし、完全レプリカと言ってもコピー品には変わりありません。
そんなJICOを交換針メーカーからカートリッジメーカーへと進化させたいと考えました。
交換針はカートリッジがあって初めて必要とされる物です。30年前に比べて世界中からご注文いただく針の種類が徐々に減ってきております。カートリッジが無くなればレコード針が製造できなくなる。長きにわたり、弊社の代名詞でもある製品です。
1990年代に世界中の音楽が一気にアナログからデジタルへと変遷してゆく時代であってもアナログレコードの火は消えず、弊社もごくわずかな人数で製造し続けてまいりました。
2020年代に入ってアナログレコードが世界中で聴き直されていることを誰が想像できたでしょう。
『この時にSHURE社のレプリカ・カートリッジの製造を開始して、その4年後にオリジナルのカートリッジの初号機を開発して発売したんだね』
こんな会話を30年後、いや50年後の社員たちが話し、カートリッジメーカーとしての黎明期に苦労している今の社員たちに思いを馳せて苦難を乗り越えてもらえればと想像しました。
Clipperという名に込めた想い
常日頃より”JICOの音” を探求しております。
2021年にSHURE44のカートリッジをリリースした直後に『2024年秋に完全オリジナルのMMカートリッジを研究開発しよう』と意を決しました。それから”JICOの音”に対する取り組み方に変化が生まれました。レプリカは目指すべきものが明確ですが、今回は何もないところからのスタートです。最初はモヤモヤとした霧の中を歩いている感じで、気付くとあっという間に1年が過ぎていました。
2022年に入って基本構造やスペックなどを技術部と商品企画室とで繰り返し議論しカートリッジの試作品を試聴室で聴き始めました。3ヶ月が経った頃にある音楽家の方と食事をする機会があり『どんな音を目指せば良いのか?』と相談しました。
そして数ヶ月が経った頃
『御社の工場がある山陰地方の風土のような音を目指されてはどうですか?』
その言葉で一気に方向性が湧き出し固まりました。
春は本社工場中庭に咲く満開の一本桜の枝から聞こえる小鳥のさえずり。
夏は空を突き抜ける青空を優雅に旋回するトンビの羽音。
秋は頭を垂れた稲穂を揺らす風の音。
そして冬は真っ黒な日本海の波が岩に打ちつける音などをイメージしました。
製品名につけたClipperとは、1930年代から1980年代にかけて名実ともにアメリカのフラッグ・キャリアとして世界の航空業界に対して非常に高い影響力を有していた航空会社パンアメリカン航空が「クリッパークラス(Clipper Class)」というものを導入していました。これが世界中の航空会社に広まったのが現在のビジネスクラスと言われています。搭乗券には座席番号や名前とともにクラスが記載されています。
ファーストクラスは「First」の頭文字「F」、
ビジネスクラスは「Clipper」の頭文字「C」、
エコノミークラスは「Economy」の語尾をとって「Y」と表記されています。(※諸説あるようですが、これが最も有力な説です)
『一般大衆的なMMカートリッジよりも少し上質なモデル』
という意味でこの名をつけました。

『過去の優れた技術を融合した古くて新しい音』
世界初のDual Fittingモデル
商品企画の段階で「SHUREの44の針も聴けるようにしてはどうか」という意見が出て即断即決で採用しました。
あくまでもClipper専用の交換針のスペックはカートリッジとの組み合わせでの音作りをします。その出来上がったカートリッジにJICOの数ある44モデルの交換針(NUDEチップ、SDチップ、MORITAシリーズ、SASシリーズ)を付けてみる。また往年のSHURE針を付けてみる。
『どんな音になるのか?』とても興味深く、ワクワクしました。
このように複数の種類の交換針を付け替えて楽しむことができるカートリッジは存在しませんでした。
(SHUREはオフィシャルには公表していないものの、裏ストーリー的に〇〇には〇〇の針も差し込めて聴けるというものは一部あります)
従来の枠を超えた、レコードの新しい楽しみ方をお届けいたします。

世界初のテーパードSカンチレバー採用
数あるカートリッジメーカーの中でも”AUDIO EMPIRE”は交換針のカンチレバーにテーパード形状を採用していました。また、日本国内では”SWINGレコード針”がLTシリーズと銘打って製品化していました。
テーパードにすることで、先端部の質量を軽減し、振動をより忠実に再現することが可能になります。
また、物理的に先端を細くし根本を太くすることで振動が後方へ増幅され、よりパワフルな音の再生を実現しています。
そのテーパードにSHURE社のSカンチレバー形状も採用した
『過去の優れた技術を融合した古くて新しい音』
を実現しました。
NUDEチップを採用
仕様を決定するにあたりJICOが展開する製品群の中で、どのチップにするか?最後までなかなか決めかねました。
最終候補にはSDとNUDE(いずれも丸針)が残り、どちらも甲乙付け難く、それぞれの特徴が出ていました。
最終的にNUDEを採用した理由は、Clipperの特長のひとつである”テーパードSカンチレバー”の性能を最も引き出したことです。色々なジャンルのリファレンスで試聴を重ねSDとの比較を行いました。
NUDEは総体的に中音域から高音域の再現度が美しく際立っています。
JICOが初めて発売するレプリカではない完全オリジナルMMカートリッジに相応しい音色を奏でます。


エイペックスグライドヘッドシェル
ヘッドシェルの指掛けは、外側(側面)にあるのが一般的です。しかし、それはあくまで人間の都合であってカートリッジの重心、バランスを考えれば、センターラインにあるのが理想的と考えました。
デザイン的には、カートリッジ本体は”美しく、優しい”印象のラウンド形状をしています。
指掛けは”スタイリッシュでスピード感”のある鋭角なフォルムデザインで旅客機の垂直尾翼をイメージしています。
今までに類を見ない形状なので、レコードを掛ける時には最初のうちは戸惑うことでしょうが、お使いになる皆さまそれぞれの方法で楽しんで頂ければ幸いです。
フォルムデザインへのこだわり
ターンテーブル、アームに取り付けた時の”カッコ良さ”を追求
30年後、50年後でも「かっこいいね」と思ってもらえるか?をテーマに約2年に及び商品企画室が中心となり設計開発しました。
まず初めに、世の中にある、自動車、船舶、オートバイク、自転車、航空機、鉄道など動く物体は総じて”カッコいい”ものが多いと考え、可能な限り色々な物体を参考にしました。そのほとんどが流線形で、大別すると鋭角な直線的なもの、丸みを帯びた曲線的なものになりました。
Clipperの音のコンセプトは「自然豊かな山陰地方の風土」ということで、”優しくて落ち着いたイメージ”を基本としながらスタイリッシュでありたいと考え、その結果、今回のフォルムに辿り着きました。
全体的なフォルムデザインは、皆さまに「どのように見えるのか?」
音の聴こえ方が人それぞれ違うように、見え方が違うのも”JICOの音”を楽しむ一つの要素であります。
音と一緒にフォルムもお楽しみください。


それぞれのトーンアームに対応
S字型やJ字型トーンアームに対応した「Clipper」
ストレートトーンアームに対応した「Clipper-S」
の2種類をラインナップしました。
近年、ストレートトーンアームを採用するターンテーブルが主流になりつつあります。
従来のS字型トーンアーム向けヘッドシェルを使用すると、針の角度がズレやすく、音の歪みやレコードへのダメージにつながる恐れがあります。
そうした課題を解決すべく、「Clipper」ではストレートトーンアームに対応した角度付きのモデルも同時に発売いたします。
JICOの伝統的なアナログ技術を受け継ぎながら、現代の再生環境に合わせて開発された本モデルは、精度の高いトラッキングと自然な音の再現を実現します。
「Clipper-S」はKORGのポータブルプレーヤー「handytraxx tube」「handytraxx 1bit」にも対応しております。


【製品仕様】
カートタイプ:MM
カラー:Glossy black
チップ素材:天然無垢ダイヤモンド
先端チップ形状:丸針
チップ径:角0.12
再生周波数範囲:20Hz〜20KHz
出力電圧:5.0mV〜8.0mV
負荷抵抗:47kΩ
直流抵抗:1.38kΩ
コンプライアンス:L4.6/V5.1
チャンネルバランス:1.5以下
チャンネルセパレーション:20db
カンチレバー:アルミニウム(JICO オリジナルテーパードSカンチ)
チップサイズ:0.7mil
針圧:1.8~2.2g
針寿命:約200時間
自重:約16.7g(ヘッドシェル含む)※Clipper-S 約13.4g
ボディ材質:UVCRM樹脂(Ultra Violet Curable Resin Mixture)
ビス材質:ステンレス
ビスの長さ:18mm
【ラインナップ】
「Clipper」¥55,000(税込)
S字型/J字型トーンアーム対応タイプ
「Clipper-S」¥55,000(税込)
ストレートトーンアーム対応タイプ
KORGのポータブルプレーヤー「handytraxx tube」「handytraxx 1bit」にも対応
「Clipper Stylus」¥14,850(税込)
Clipper/Clipper-S専用交換針
【受注開始日】
2025年10月1日(水)10:00
【出荷予定時期】
2025年10月下旬以降順次
【製品に関するご注意】
掲載している製品画像と実際の製品の色目は、画質の関係により若干異なる場合があります。