アナログレコードを愛する人々第22回 TSU→

2023-12-07

アナログレコードに携わっている方にインタビューする企画です。

第22回は、横浜でカフェとライブハウスを営んでいるTSU→さんにインタビュー!

—音楽との出会いを教えてください。

初めてダンスミュージックに触れたのが、中学3年生の時に先輩に連れて行ってもらった渋谷のホットポイントというディスコでした。
そこで見た光景が衝撃的で、みんなワイワイ踊っていましたが、そのなかでも自分がカッコイイと思ったのがDJでした。
ビースティ・ボーイズやKC&ザ・サンシャイン・バンド、ヒップホップからディスコまで色んなジャンルのものが掛かっていて、そういう文化に興味を持ちました。

—よく聴くジャンルは何ですか?

ハウスDJをしているのでハウスやディスコ、ソウルですね。
ロック、ジャズ、ラテンなどオールジャンルでハウスのように踊れる音楽を選んだりします。

今所有しているレコードでも半分くらいはハウス、残り半分はオールジャンルです。
DJをするときは必ずレコードでプレイしています。

—いつからレコードを聴いていましたか?

世代的にはちょうどCDが
出始めたくらいですが、小学校低学年の時に兄の影響でレコードを聴いていたのが一番最初でした。

—レコードを集め始めたのはいつ頃からでしたか?

高校生の時からソウルやディスコのレコードを買い始めて、その後ディスコに通うようになって、そこで気になった曲があるとそのレコードを買うようになりました。
アルバイトしたり、専門学生の時は親からの食事代をやりくりしてレコードを買っていましたね。

—何系の専門学校に通っていたんですか?

ファッションも好きで東京モード学園に行ってました。
その当時は裏原の文化が流行っていて、そこで自分のブランドを立ち上げてお店を構えるというのが夢でした。

—それでもファッションではなく音楽の道に進んだのですね。

東京モード学園の同級生が渋谷のCAVEというクラブで照明をしていました。
そこに遊びに行った時にハウスのチームがいて、その先輩たちから色々教わって影響を受けました。
当時東京のハウスDJは少なかったので貴重な出会いでした。
在学中はニューヨークなど海外に行くこともありましたが、ファッション目的ではなく、クラブやレコードショップが目的でしたね。

—ファッションの道ではなく、DJの道に進んで親に反対はされなかったですか?

両親は文句言いつつも自分の好きなことをやらせてくれていたので感謝しています。
プロのDJを目指すというよりは、普通の仕事をしながら休みの日などにパーティをやるというスタンスだったので、そこまで心配されませんでした。

—専門学校を卒業した後はどうしていましたか?

卒業後1年くらいは表参道にあった友達の洋服屋で店長をやっていました。
その時も仕事帰りに毎日レコードショップに寄って、夜はクラブに通うような毎日でした。
そうしているうちに自分がやりたいのはこの職業じゃないなと思いました。

クラブでだんだん仲間ができてきて、そのうち自分たちでもパーティを開くようになり、
25歳くらいの時に青山LOOPでレギュラーパーティをはじめました。

—なぜそこからここのお店をやり始めるに至りましたか?

もともとお店を作るつもりはなかったんです。
自分のレコードコレクションを祖父の家に置いていましたが、古くなり潰すことになったので、新たにレコードを保管できる倉庫を探していました。

それでたまたまこの建物がB1から2Fまで全て貸出していて、ここなら保管しておいても大丈夫だろうと思いました。
またちょうどそのタイミングで仕事のパートナーmiwaちゃんからお店をやりたいと連絡があったので、一緒に見に来てお互い気に入って借りてしまおうとなりました。

そんな感じでここでお店をやるつもりはなかったんですが、色々タイミングが重なって始めました。

—このレコードラックはコレクターとしては憧れだと思います。

今までレコードはずっと床置きだったので、いつかこういうラックを作ってコレクションしたいと思っていました。
実は、ラックの木のサイズが一枚一枚違っていて、この建物に合うように1mm単位で加工しました。

—ここは繁華街からは離れていますが、この場所にお店を構えるのは勇気が要りませんでしたか?

もともとmiwaちゃんが反町(横浜の隣の駅)でお店をやっていて、
そこでもパーティやライブをしていましたが、駅前だったのでよく苦情が来ていました。
なので次にお店を出す時は苦情が出ないような場所にしたかったんです。
それで電車がすぐ横を走っているこの場所はベストでした。もともと地下は音楽スタジオだったので音の神がいるなと。
反町にあったお店からここは歩いても来られる距離なので、今までのお客さんも来られて良いなと思いました。

あとは魅力的な空間を作って、通りすがりの人が入ってくるのではなく、目的を持って来てくれるようなお店にすれば絶対に成功するという自信がありました。

—確かにお客さん同士も仲良さそうですもんね。

客層は様々ですがみなさん良い人ばかりです。
繁華街ではない分、変な人だったり嫌なお客さんが来ることはないですね。

ランチ時は主婦同士だったり女性が多かったりします。
ヘルシーなメニューが多く、女性オーナーなので女性1人でも入りやすいのかなと。
ちなみにペットもOKです。

—SUNDAYという店名の由来は?

一番初めに毎日が日曜日って感じでSUNDAYはどうかなとmiwaちゃんに相談しました。
ですがその時はあんまりピンと来ていなかったようで、他にもなんか考えてと言われてました。

そうしているうちに、ここの工事が始まって、ここが太陽が朝から夕方までずっと当たっている物件だと気付いたんです。

それで太陽を感じるところだと思い、毎日が太陽の日=SUN + DAYということで結果的にSUNDAYが蘇ってきて付けることになりました。

—このあたりには他にクラブやライブハウスはありますか?

今は都市開発でなくなってしまいました。
昔は反町にも小さいお店がたくさん集まっていてDJパーティやライブをやっていました。
ブロックパーティといって何店舗かが共同で、この店はライブ、この店は歌舞伎っぽいこと、この店はダーツの大会みたいに色々なことが開催されてました。

当時は夜中の1時にDJに入って朝10時くらいまでやっていて、都内のパーティから帰って来た人が朝方に来たりしていました。

—TSU→さんは音楽を繋いでいくクラブDJのタイプだと思いますが、いわゆるターンテーブリストのようにスクラッチなどすることはありますか?

スクラッチはしないですね。周りのDJもクラブDJタイプばかりですね。
スクラッチはどちらかというとDJ自体がメインで、パフォーマンスを魅せるものだと思います。
私はどちらかというとお客さんがメインで、フロアのお客さんをいかに気持ち良くさせるかを考えています。今この曲が欲しいかなとか、DJはそういう超能力的な空気感を読める能力が必要かなと思います。

—日本だとDJだけでは生計が難しい、一方でアメリカではDJだけで食べていけることが多いようですが、その違いはなんでしょうか?

アメリカはDJのギャラがしっかり支払われることが大きいと思います。
例えばニューヨークのバーでは2時間まわして5万円とか、ちょっとしたことでも仕事としてDJが認識してされています。

日本ではDJが仕事や職業として認識されていないことが多く、交通費だけでギャラまで支払われることはなかなかないです。

この店でも若いDJがプレイすることもあるので、箱代はなるべく安くしてDJへのギャラが発生するようにしています。

—JICOを知ったきっかけはなんですか?

10年くらい前に八王子のSHeLTeR(JICOが聴けるステキなお店#3参照)に行った時、みんな自分でカスタムしたSHURE M44Gを持ち込んでプレイしていました。それで自分もSHUREを使い始めました。
SHeLTeRの店主義男さんが使っている針は何か聞いてみると、それがJICOのN44Eでした。そこでJICOを知って買うようになりました。

丸針も持っていますがダエン針のN44Eの方が好みですね。
N44Eはハウスだけでなく、ジャズ、ソウル、ダンス、クラシックなど万能だと思います。

—アナログレコードの良さは何だと思いますか?

デジタルデータも扱いやすくて良いと思いますが、レコードはデータよりさらにもう一歩心の奥まで届く音がして、そういったレコードの空気感が好きです。DJをしていてもその一歩があるかどうかがすごく大きいです。
レコードじゃないと伝えられないことがあるので、レコードでプレイしています。

—この先レコードブームはどうなると思いますか?

レコードは過去にも何度もなくなりそうになっては復活してきているので、レコード文化は廃れずに残っていくと思います。
便利になっていくほどデジタルが扱われますが、レコードはモノとしての人気も出てくると思います。
DJの世界で使わなくなったとしても、家でゆっくり音楽を聴きたいときはやっぱりレコードみたいな。

—今後の展望を教えてください。

外国の方を呼んだ大きな野外フェスとか、何百人も呼べるようなパーティをやっていきたいですし、レコードショップもやってみたいです。もっと外に発信していければと思っています。

ライフワークであるDJも続けていきながら、自分が前に出るだけでなく、いろんな企業とかともコラボして音楽を世界に広めていきたいです。

あなたにとってのアナログレコードとは?

【プロフィール】

TSU→ (MOOV/HEAD★HUNTERS)
ハウスミュージックを軸に、26年のロングパーティーMOOV (aoyama zero)、オールヴァイナルの世界を追求したジャンルレスなパーティーHEAD★HUNTERS at SHeLTeR 、地元横浜での主催パーティーTONIGHT SPECIAL (seasidebar Neptune)などレギュラーパーティーの他、
Vinylを中心とした本格派DJとして、時代とともに常に進化するプレイが評判を呼び、全国様々なパーティーにゲスト出演。

2021年からは横浜にハイクオリティなサウンドでダンスフロアーも完備する遊べるレストランSUNDAYをプロデュース。
今話題のスポットとして「food」「art」「music」をキーワードに、ライブやギャラリーなどの常時イベントや、様々なカルチャーの交流の場として地域に愛されるお店SUNDAYを中心としたコミュニティができつつあり、その中心人物である。

SUNDAY
〒221-0062
神奈川県横浜市神奈川区浦島丘2 野内ビル1F
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TEL:045-873-7629

(LUNCH) 12:00-15:00
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(CLOSED) monday

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