アナログレコードを愛する人々第7回 DJ SHARK 氏

2019-09-12

第7回は、長年HIPHOP DJとして活躍されているDJ SHRK氏にインタビュー。DJ修行のためにニューヨークに住まわれたことがあるそうです。

『いまだに納得できる音が出せていない』

―レコードブームの再来と言われていますが、以前のブームとは違いますか?

間違いなく違うと思います。いろんな人がレコードを楽しんでいると思います。DJ機器などは本当に好きな人だけが買っている。それが僕はすごく嬉しいです。僕自身、昔は、そんなに音にこだわっていなかったんですが、今は特にアナログで回す時は気にします。

―具体的にどういった点を気にしますか?

音の出方です。イベントなどで(レコードを)回す時は、会場の環境にもよりますけど、雑音の多い所だと「音が出てればいいか」と思うんですが、クラブやリスニング会場のような、皆さんが真剣に聞き入られる所だと全然納得できないです。全部自分の機材を持っていきます。それでも自分の納得できる音が出せていないんです。


―DJに興味を持たれた経緯を教えてください。

若いときに京都の三条にあった「MAHARAJA CLUB」へ踊りによく行ってたんです。当時は滋賀に住んでいたんですけど、あるとき滋賀で大きなイベントがあったんです。そこでDJを見て、「なんやこれは!!」と思いすぐにDJ機器を買いに行きました。DJの真似事みたいなことを家でずっとやってましたね。

―レコードを収集されだしたのも、その頃ですか?

本格的に始めたのは、その頃からですね。それまでもレコードは持っていましたが、全くジャンルが違うレコードを買っていました。


『やっぱり家とは違うなと』

―人前で初めてDJプレイを披露されたときのことを教えてください。

学校を卒業してすぐ、滋賀から京都に出てきて働きながら自分で*ミックステープを作り京都のクラブへ売り込んでいました。そしたら電話が掛かってきて、そのクラブで面接みたいな感じでDJプレイを見てもらいました。その後いきなりお客さんの前でDJをすることになり、ブルブル震えながらプレイしました。

―その日を終えられて、いかがでしたか?

ものすごく楽しかったですね。やっぱり家とは違うなと(笑)。お客さんに「選曲がいいな」とか「良かったよ」と言われたりしてめちゃくちゃ嬉しかったです。

―DJとして本格的にやっていこうと思われたのは?

これで食べていこうとかは考えていなかったです。昼間は働いて週末にクラブでDJをするって感じでした。最初は無名でしたのでギャラも少なくて、昼間働いたお金で少しずつレコードを買ってました。

スタジオの一角にあるギターと録音機材。


『選曲にはその人のセンスが出る』

―曲と曲をつなぐ時の選曲はその人のセンスが出るものなのですか?

大いに出ます。リズムが大事なんですよ。今かかっている曲から次はこの曲をかけたらいい感じになるんじゃないかとか。ただレコードの場合は、その時に持ってるレコードの中だけでしか選べないんですが、PCの場合はいっぱい曲が入っているのでね。僕なんかは曲名で覚えてなくてレコードジャケットで曲を覚えてるんですよ。たまに違うレコードが入ってるんでその時はビビりますけど(笑)。


『ターンテーブルはスポーツカーのようです』

―PCを使用したDJが大多数になって来ていますが、ご自身はいかがですか?

私もTPOに合わせてPCで回す時があります。最初の2年ぐらいはなかなか慣れなくて外に持ち出せなかったですね。ターンテーブルとPCでは全く違うんですよ。面白さではターンテーブルの方が勝りますね。力量がそのまま出ます。やっぱりターンテーブルでレコードを回すのは難しいんですよ。

PCとターンテーブルでは0.数ミリの間のズレがあってデジタルの方が反応が遅いです。車のハンドルに例えるとPCは普通の乗用車でターンテーブルは遊びが全くないゴーカートやスポーツカーのようです。

―レコードは何枚ぐらいお持ちですか?

今は最盛期の半分くらいしか無いと思います。全部ニューヨークに持って行き、あちらでもレコードを沢山買いましたが、帰国するときに知人にほとんどあげました。今は五千枚ぐらいしかないですね。優に一万枚以上は買っていますが、僕は少ない方だと思いますよ。

―SHURE社が昨年カートリッジから撤退しましたがカートリッジ(交換針)にこだわりがありますか?

最初はSHUREの44Gを使っていて、途中でOrtofonのコンコルドを使ったりしましたが。自分にはやはりSHURE M44-7が一番しっくりきます。


『単身、ニューヨークへ渡ったんです』

―ニューヨークへ行かれたんですね?

そうですね。京都でDJを始めたんですが、あるとき地元の滋賀へ戻ったんです。

その頃はDJの大会によく出場していて、1996年のDMCまで出ていました。しかし、大会ばかり出ていたら、選曲がわからなくなったんです。クラブでお客さんの雰囲気を感じることができなくなってしまって。壁にぶち当たったんですね(笑)。ちょっと勉強したいなと思いまして。それまでにニューヨークへは何度か行っていたんですが、行くのと住むのとは違うと思い、単身ニューヨークへ渡ったんです。5年の間にクラブ、イベント、ショータイムなど色々な経験をさせてもらいました。

―SHARKさんの選曲は、やはりニューヨークの影響が大きいですか?

やっぱり大きいですね。帰国当初はかなり影響を受けていたと思います。今は好き勝手にやらせてもらってますけど(笑)。


『ダンスの世界に近付いている」

―現在、ご自身を取り巻く環境についてお聞かせください。

帰国した当初はDJとしての仕事が全くなかったですが、去年ぐらいから色々とお声掛けいただいてます。特にTechnicsさんが復活(SL-1200/7を発売した)したのが大きいです。これからの時代は、明け方までやってるクラブとかじゃなくて、健全な昼間とかの野外イベントで本当に音楽を楽しみ、本当に音楽が好きな人が集まるようじゃないといけません。アメリカのLAでも0時までですよ。でも、最近は少しずつですが小さい子たちがDJに興味を持ち始めているようなんです。DJはちょっと遅れたけれども、ダンスの世界に近付いてきているんじゃないかなぁと思うんです。キッズダンスのように学校の授業にも入っているので。親もダンススクールに子供を通わせるように、これからはDJスクールへ通わせる親も増えるんじゃないですかね。

―最後に、これからDJを目指される人に対して

自分が楽しいと思うことをやるのが一番だと思う。何事も壁にぶち当たると思うんですよ、その時に乗り越えるには好きなことじゃないとしんどいと思うんです。ニューヨークに住んでみたら全然違ったんです。”ノリ”が全然違った。僕はアメリカの人たちの技を盗もうと必死でしたが、彼らは個性を出そうと必死でしたね。なんでも必死にならないとダメかなぁ。

*既存の楽曲にリミックスなどを施し、それらを繋げて独自に作成した楽曲集。媒体がテープであるとは限らない。

インタビュー後記
SHARKさんのDJプレイはとても繊細な指の動きで、まるでピアノを弾いているようでした。ご自宅の一角をご自身で改装されたスタジオはSHARKさんの音楽に対する姿勢そのもので、繊細でいておしゃれであり、かつ質実剛健な印象を受けました。音を聴く時の、一点を見つめる鋭い眼光から音楽への真摯な心意気を感じました。

DJ SHARK (でぃーじぇい・しゃーく)

90年代初期からDJ、ターンテーブリストとして活躍し、96年Japan DMC Battleのウエストコーストチャンピオンに輝く。Technicsのターンテーブル、ミキサーの開発に協力し、企画から参加したTechnics初のHIPHOPDJミキサー『SH-1200』は、今も世界中のDJ達に愛されている。

1999年、初の自身のアルバム”Inqbation”をMirror Ball/RC Recordsよりリリース。アフリカバンバーダの率いるZulu Nationのインターナショナル・ヒップホップ2000年の枠で2位に選ばれる。プロデュース業も幅広くこなし、レゲエやロックの方面でもプロデュースやリミックスを行う。ライブではバンバーダやQ-bert, Z-trip,Five Deezなどのオープニングも務め、2002年にはテクニクスの30周年イベントでスペシャルゲストとしてプレイ。

その後ニューヨークに渡り、オールドスクールマンスリーパーティ『Back in da Days』をブルックリンで主催、数々のHIPHOPレジェンド達との共演を果たす。
(GrandMaster Mell Mel, Grand Wizard Theodore, DJ Spinna, Large Professor, Rob Swift, DP-One, Jeru the Damaja等)

日本へ帰国後、Back in da Days JAPANツアーを行い、NYよりJeru the Damajaをゲストに全国6カ所にBrooklyn旋風を巻き起こした。http://www.youtube.com/watch?v=B0D4Gxqfp9I

2010年、NY生活の集大成的アルバム”Back in da Days VOL.1″、2011年には『Back in da Days Vol.2』をNORTH SETZよりリリース。

Grand Master Flash京都公演、UMB (Ultimate MC Battle)@Liquid Room、B-BOY商店街@彦根、Keep it real主催 “Fun Kir”@横浜など、活動の幅を広げている。

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