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世界初、カンチレバーに木材を使用したレコード針「MORITA~Wood Curving Cantilever~黒柿」を11月18日(月)に発売!

レコード針の老舗企業、日本精機宝石工業株式会社 (JICO)は、この度カンチレバーの材質に木材「黒柿」を採用したモデルを、2019年11月18日に発売いたします。 「木製のカンチレバーをもったレコード針の音を聴いてみたくなった」 本製品は寡黙なレコード針職人・森田耕太郎のひと言から生まれました。森田は約半世紀に亘りJICOの社員としてただひたすら「モノづくり」を続けて参りました。そんな彼の精神、技術、実績を後世に残したいという意図で彼の「名」を冠した製品をこの度発売するに至りました。 カンチレバーとは日本語では片持ち梁(かたもちばり)と言い、水泳プールにある飛込み板のような構造の総称です。レコード針においては、材質、サスペンション性能、形状などによって音質に変化をもたらします。従来の素材はアルミニウムなど金属製が主流ですが、Wood Carving Cantilever黒柿は天然木を採用している為、必要サイズまで削り出した後、節や亀裂が入っていると使い物になりません。木材の持つ特性を生かし、一つずつ慎重かつ丁寧に細心の注意を払いながら組み立てています。 クロガキとは温暖の地よりも、山地の寒冷地に植えられています。 "しみ"(黒色の縞)は渋柿に比較的よくでるとされていますが、"しみ"がなぜ出るかはあきらかではありません。心材に黒色の縞が生じ部分的に一面黒色になるものが偶然現れるとされています。正倉院の木工品に見事な"黒柿両面厨子"に使われて以来、高級銘木として珍重され東宮御所の壁面にも使われています。 クロガキ選定までの道程数十種類の木材を材木屋さんで分けてもらい、それぞれの特性を調べました。数十種類ある自社製のダンパゴムと組み合わせながらサンプルを作成し、サンプルデータを取り異常値が出ない限り、次々とリファレンスレコードで試聴を重ねました。試行錯誤を続ける中で、木の特性が素直に音として再現出来ているのか、音作りはこれで正しいのか等様々な問題点も浮かび上がりましたが、原点を戻って考えると「森田が聴いてみたいと思った音」がこの製品の音なのだという答えに至りました。 満を持してJICOが始める全く新しいレコード針『MORITA』の艶やかな音世界にどうぞご期待ください。 【MORITA〜Wood Carving Cantilever〜黒柿 交換針ラインナップ 対応カートリッジ】Shure:V15 TypeⅢ、V15 TypeⅣ、V15/V、V15VxMR、M44G/M44-7両用  【Wood Carving Cantilever黒柿交換針 商品仕様】受注開始:2019年11月18日(月)出荷開始:受注後約1〜2週間程度 ※1価格: V15 TypeⅢ、M44 ¥10,000(税別) / V15 TypeⅣ、V15/V、V15VxMR ¥12,000(税別)針圧: V15 TypeⅢ、V15 TypeⅣ、V15/V、V15VxMR :0.75〜1.25gM44G/M44-7両用:1.5〜3.0g商品仕様: 専用パッケージラベル【弊社直販ウェブサイトのみの取り扱いとなります】 ※1:ご注文が混雑した場合はさらにお時間をいただきます。 日本精機宝石工業株式会社(JICO)とは私たちは、和服用の縫い針を京都という一大消費地に卸す針工場として、兵庫県北の港町浜坂に誕生しました。1967年よりレコード針を作り始めて現在も当時と変わらない国産手作りの生産を続けています。2200種類のレコード針を一個のご注文からお届けします。お父様やお祖父様から引き継いだレコードプレーヤーの針。JICOならご用意できます。あなたの針がきっとあります。 【お問い合わせ先】  日本精機宝石工業株式会社 東京支店フリーダイヤル  0120-579-010 / メールアドレス inquiry@jico.co.jp受付時間 10:00〜12:00 / 13:00〜17:00(土日祝日除く)公式WEB Shop:https://shop.jico.co.jp ...

「ライブの音が苦手なんです」アナログレコードを愛する人々 第10回

オーディオに携わる方、職人の方にインタビューする企画です。第10回は、鳥取の鐵工所 松田安鐵工代表の 松田 安弘 氏。「隣の部屋で誰かがかけた音楽を偶然耳にするのがいい」そうです。 『レコード芸術が大好き』 ―個人のお客様向けに鉄製品を作られていると伺いましたが?鳥取県のそれぞれの会社の特徴を活かしたモノづくりを、工業用じゃなく家庭用として発信しようという取組みがあり、県出身の著名な工業デザイナーが中心となって作ったものです。デザイナーさんの意図通りに製造するのが難しく、製品化に至らなかった企画もあったようです。弊社も鋳物にマットな感じの塗装をするのが難しくて苦労しましたが、努力の末、鋳物のインテリア雑貨を作りました。私としては鋳物製スピーカーキャビネットを作りたかったのですが、重量ひとつが150kgにもなり、周りの反対もあり、あきらめました。昔のアメリカの劇場にあった感じのスピーカーを作りたかったのです。鋳鉄は音響製品に非常に向いていることを知っていますのでね。昔は重たい金属でスピーカーを作るという時代があったんですが、今では木製が主流になりました。 ―JICOをご存知だとお伺いしましたが?知人から聞いていて素晴らしい、いい仕事をされている会社だと10年以上前から聞いていました。レコードが大好きなものですから最近レコードが復活していてとても嬉しいです。私は実音じゃなくてレコード音が好きなんです。 『隣の部屋から聴こえるレコード』 ―レコードの音がお好きとは?生演奏(ライブ)の音が苦手なんです。周囲は騒音、雑音だらけだし奏者がミスるしで体に悪い(笑)。レコード芸術というのが好きなんです。カセットテープも好きですね。トロッと甘みのある音でね。 ―アナログの音がお好きということですね。そうですね。CDだと情報を「聞いている」感じです。レコード芸術というのは精神性を「聴いている」気がします。だけどレコードをオーディオセットの前で聞くのは好きじゃないんです。部屋で鳴らしているのを隣の部屋で聴くというのが一番好きです。 全て松田安鐵工で製作された商品。左からセロハンテープカッター、お香立て、香炉 ―それは、どういうことですか?自分でかけているのじゃなく、誰かがかけているのが偶然聞こえてくる位の距離感が心地よいのです(笑) ―音楽への道を断念されて家業を継承されたと伺いましたが?いやいや、そんなに深刻なものではないんです。あるレコードを初めて聞いた時に「こんな神業があるんだな。(自分では)出来ないな」と思いました。中学生の時に出会った戦時中のフランスの音楽なんですけどね。本当にびっくりしました。音楽(で食べていくの)があまりにも険しい山だと実感しましたね。 ―どのようにびっくりされたのですか?戦時中の音なので音色ではないですよ。テクニックです。あまりにもテクニックが凄いのです。しかもジプシーのギタリストで火傷を負っていて左手が二本指なんですよ。それなのにリズムタイトで隙がない演奏なんです。元々は*渡辺貞夫先生を尊敬していまして、まだ現役でライブをされていて凄いと思います。小学生の時に鳥取市民会館でのコンサートへ行ってから尊敬してやみません。最近では、90歳になられる**北村英治さんがものすごい演奏をされるんですよ。今の北村英治さんはベニー・グッドマンよりいい演奏をされると思いますよ。本当に美しい音です。 ―ジャズを中心にお聴きになられているのですか?そうですね。でもやっぱり世代ってこともあり、ビートルズを聴いてしまいますね。一音でもビートルズだと判るような、なんとも言えないあの***リッケンバッカーのバカみたいに軽いギター音と男性コーラスとは思えないユニゾンのような、三人の声が混ざり合っていてね。録音技術が良いのかなぁ。当時はあの録音芸術が最先端だと思っていました。全くの生の演奏ではないですよね。録音してからイコライジングして出来上がった音なのでね。それが僕は録音芸術だと思っています。だから生演奏が苦手なんですよ。生演奏というのは演奏を聴いているということだから、演奏者の思いに付きあわざるをえないでしょう。やっぱりレコードを隣の部屋で聴くっていうのがいいね(笑)。 ―漏れ聞こえてくるのがいいのですね。そうです。ホントにそういう感じ。あとね、ラジオから聞こえてくる温かみっていうのも好きですね。リクエストしていないのに偶然好きな曲がかかるっていう幸運感がたまらなく好きです。それも隣の部屋から聞こえてくる感じね。 ―どうしても隣の部屋からなのですね(笑)。皆さんには理解されないんですよね。なんのこっちゃってね(笑)。 ―レコードに出会われた頃のお話をお聞かせください。僕らの世代はみんな音楽が好きなんですよ。小学生の頃の歌謡曲を聴いたりしている時のジャズフレーバーのする音楽。たとえば****伊東ゆかり、*****園まりの音楽を聴いて育ってきました。最終的に******ザ・ピーナッツに出会うんですね。世界にこれしかないというハーモニーを聞き、音楽に対して妙な感情が湧くものだと知ったのです。小学生ですから人生のなんたるかも知らないですよね。ただその音楽を聴くことで悲しみや喜びとを味わうことが出来ると子供ながらに感じたんです。それから音楽の楽しさを知りました。 たくさんの鋳型が積み上げられている鐵工所内。 『力みのない洒脱な感じ』 自分が生まれる前のものが大好きです。特に室町時代の頃。室町時代って趣味が渋いでしょ。現代の人間に比べたら大人ですよね。人間は後退していると思いますよ、特に美意識は。日本の芸術ってダビンチ的なアートじゃないですから、職人的なもので、自分を抑えた感じで良い風合いが出ていると思うのです。 ―悲哀というか侘び寂びな感じがお好きなのですか?そうです。侘び寂びですね。音楽に対してもそういう気持ちが有ったのかもしれません。ビートルズの曲の中でもジョン・レノンの力みのない洒脱な感じか好きです。彼はきっと鼻歌みたいにして作ったんじゃないかと思います。そうじゃないとあんな曲は作れないですよ。それに比べ、ポール・マッカートニーは力んで作ったに違いありません。あれだけ長い曲を作る人ですし、天才ですよね。ポールみたいにあんな長いメロディーを書ける人はいない。ワンフレーズ無駄なく隙なく綺麗なメロディーです。 『機械と音楽と自分と』 ―ここまでお伺いしていて、とても繊細でいらっしゃると感じたのですが、それがお仕事に通ずるのでしょうか?工作機械を使って削る作業は楽器演奏に近いと思っています。削る音なんかもそうですが、製品完成のゴールに向かって、いろんな方法や色んな道があります。どの道を選ぶかというのが「自分のテイスト」なんですよ。音楽も同じです。「機械VS自分、音楽VS自分」、似ていると思います。やはりレコード芸術っていうのは楽器演奏だと本当にそう思います。 電気炉で約1400℃まで熱した鉄を炉から出し、手酌で型に流し込む様子。 ―ところで、社名の「松田安」というのは?代々屋号のように松田安なんとかという名前を皆つけていました。私の倅にも松田安を付けたのですが、倅は自分に息子が出来ても付けないと言ってます(笑) ―ご創業はいつですか?曾祖父が創業し、今年で122年です。しかし曾祖父が早くに亡くなり、祖父は鍛冶屋へ丁稚奉公に行って一年ぐらいで覚えて跡を継いだ様です。 ―お気に入りの一枚を教えてください。ジャンゴ・ラインハルトの「Django Reinhardt」です。中学生の頃に聴いたこの演奏に、衝撃を受けました。 ―あなたにとって、アナログレコードとは? https://youtu.be/v1gHDwqHA9M ...

JICOが聴けるステキなお店 #2 神宮前「bonobo」

JR千駄ヶ谷駅を出ると、眼前に東京体育館がそびえ、否が応でもオリンピックへの昂揚感が掻き立てられる。いくつかの通りを渡れば閑静な住宅地に入る。折しも祭礼日であったか、祭姿の一行とすれ違った。東京と江戸が交差するそんな街角にbonoboは圧倒的な存在感でそこにある。隠れ家的なドアを押すと、この場所が特別でかつ多くの音楽通に愛される訳が分かる。 店主の成浩一氏曰く「いい音は人を感情的にするんです。日常のいろんな垣根を越えて、ここで仲良くなって頂きたいです。」低音を効かせた刺激だけの音楽ではなく、音楽で感動を与えたいとの意図でNYの有名クラブ「The Loft」での体験をもとに15年前に開店。 https://youtu.be/G4uGZ-eZht4 システムはスピーカーがアルテック604のユニットを使用した自作。ミキサーも真空管を10本搭載した日本に一台しかないもの。SHURE社のMMカートリッジを採用。「ここはいろんな人がDJとして来るので折れない44-7を使っています。」 3つのフロアからなるbonobo。2Fは和室仕様になっており「お座敷DJ」を楽しめる。不思議な居心地の良さが外国の方にも人気だそう。 おすすめの一杯は何杯でも飲めるという「ウォッカ・クランベリー」 JICO品についての印象を伺うと「N-44-7の入手で困ってる方に、純正との差異を全く感じない、互換性のある品と安心してお薦めできます」 普段ヘッドフォンで音楽を聞いている高校生の女の子に「あれ、ここ、何か音いいわネ。気持ちいいかも。」と言わせるくらいじゃないとダメだと言う成氏。「ガウディハウス」の様に進化し続けるbonoboで、極上の音に揺さぶられていたい。 https://youtu.be/F7ptE-4_CXg ミュージックBar「bonobo」店名は中央アフリカに生息するサルの種族の名前から。ボノボは知能が高く何より平和的なサルで有名。「バナナを1本与えるとチンパンジーは食べちゃいますが、ボノボは半分に割って仲間と分けるんですって。」〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-23-4   ☎ 03-6804-5542火~日 PM9:00~AM5:00 ランチ営業で関西うどんを供している。【http://bonobo.jp】 このコーナーでは JICOのレコード針をお使いのお店をご紹介させて頂いております。自薦他薦を問いませんので、どうぞご応募くださいませ。 ご応募はこちらから↓日本精機宝石工業(株)東京支店メールアドレス:inquiry@jico.co.jpメールタイトルに「JICOが聴けるステキなお店掲載希望」と記載の上、ご応募ください。  ...

試聴会開催のお知らせ

11月発売の「MORITA〜ウッドカービングカンチレバー〜黒柿」の発売記念試聴会を11月16日(土)に神田JAZZ OLYMPUS!にて開催いたします。 日時:11月16日(土)14:00から約2時間   ※入場は13:45からになります。それ以前に来場されましても入場できません。ご注意ください。場所:JAZZ OLYMPUS!    住所:東京都千代田区神田小川町3-24(URL:http://jazz-olympus.com)入場料無料、1ドリンク付完全予約制(先着30名様)となります。 お申し込み方法:お問い合わせフォームもしくは「inquiry@jico.co.jp」宛にタイトル「MORITA試聴会希望」と記載の上、お名前とお電話番号を本文に必ずご記入頂きますようお願いいたします。ご記載がない場合、予約をお受けできませんのでご注意ください。お電話でも受付しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 【日本精機宝石工業株式会社 東京支店】TEL:0120-579-010 ...

「リード線で本当に音は変わるのか?」アナログレコードを愛する人々 第9回

アナログレコードを聞くための機材を製作されている方にインタビューする企画です。第9回は、シェルリード専門工房 KS-Remasta 工房責任者 柄沢 伸吾 氏。シェルリードの製作に用いる「刃物の切れ味で音が変わる」そうです。 『輸入盤屋さんの匂いが心地よかった』 ―マライア・キャリーのレコードが沢山ありますね。 そうですね。ほとんどあると思います。 ―それに、ものすごい数のカートリッジを大切にケースに収納されてますね。 財産になりますかね。(笑) このケースは、もともとミニカー用なんです。色々とサイズがあるのですが、蓋を閉めても中でヘッドシェルが暴れないものが良いです。 ―レコードに興味を持たれたのは? 初めて買ったEPレコードは、山口百恵さんの「プレイバックパート2」です。小学生の時に買いました。LPは甲斐バンドの「甲斐バンドストーリー」。中学二年生ぐらいから洋楽を聴きはじめ、高校生になると輸入盤を買うようになりました。特に輸入盤屋さんの匂いが、なんとも言えなく心地よかったです。 あの匂いはなんて説明したらいいのか。輸入盤だから勝手に外国の匂いと思い込んでいたんだと思います。今でもするのかな、あの匂い。 『改めてレコードの音の良さにビックリ』 当時はレコードよりCDが高かったんです。たぶんCDの方が音がいいんだろうなと思いながらレコードを我慢して聴いていた時期もありました。30歳ぐらいの時に改めてCDとレコードでマライア・キャリーを聴き比べると、レコードの方が圧倒的に艶やかで、ダイナミックで、空間を満たす感じが見事でした。 ―シェルリード線を作ろうとされた経緯についてお聞かせください。 社会に出てカートリッジを買えるようになった頃、欲しいと思っていたカートリッジが製造中止になったんです。それをきっかけに「今買っておかなくてはなくなってしまう」と思いました。30個ぐらい買った時に「このカートリッジたちの音を素直に出してくれるリード線がほしい」となったんです。 リード線もお手頃の物が手に入らなくなり、「メーカー付属のリード線でちゃんと音が出ているのだろうか?」と疑問を抱きました。1,000円程度で市販されているものは、特徴的で明るい音でしたが「素の音じゃない」と感じていました。そのうち海外製で4,000円の物が発売されました。だいたいカートリッジを買うときはヘッドシェルまで買うじゃないですか、ヘッドシェルまでは買えてもリード線までなかなか買えなかったんです。発売されたその海外製のリード線で聴くとすごく上品できれいな音がしました。 やはりこういうので揃えたいと思ったのですが、30個あるカートリッジすべてを揃えるのは、ちょっと大変だなと思い、何度もハンダ付けを失敗しながら自作したのがきっかけです。 『ハッとする時とそうでもない時』 ―その当時は電気の知識やハンダ付けの技術をお持ちだったのですか? 全くといっていいほどありませんでした。だから最初は上手くいきませんでした。そんな時にスピーカー自作のサークルでスピーカーターミナルのところをハンダ付けしている工程を見たんです。オーディオ中古店で手際よくハンダ付けをしているのも見ました。とにかく、真似をするしかないと続けていると少し形になったんです。その頃シェルリード線についてアドバイスしてくれる方に出会いました。その方との出会いによって、今の基礎を築くことができました。 少しずつお客さんにも知られるようになりました。オーディオ誌にも取り上げられ、とても良い評価を頂きました。それで屋号を「KS-Remasta」として立ち上げました。高評価を得た製品はヴィンテージワイヤーを使用した製品でした。ヴィンテージワイヤーをハンダ付けするとき、エナメルを刃物で剥がす工程があります。素材を厳選していたことはもちろんですが、この工程を丁寧に行っていたことが、高音質に結びついていたんだと思います。 ―丁寧っていうのは、どの位の差なんですか? 良く切れる刃物でエナメルを念入りに少しずつ剥がすということです。別に丁寧にしなくてもハンダもつくし、音も出るのですが、仕上がりが気に入らなかったのです。でも今思えば丁寧に行っていたからこそ僕のリード線は音が良いと評判になったんだと思います。ある時、その刃物をデザインナイフから医療用メスに変えてみました。最高級のリード線というのは、とても細く、髪の毛ぐらいしか太さがないんです。このモデルのリード線は糸で被覆してあり、その上のエナメルを剥がすのですが、医療用メスに変えると、とても音が良くなったとユーザー様から言われたんです。 なんで良くなったのか、その時は自分でもよく分かりませんでした。別のコーチからある時「ハッとするぐらい良い時と、そうでもない時がある」と言われました。その時は、フラッグシップモデル・Legendを完成させたかったのでバラツキがあってはならないと思っていたんです。そして「刃物の切れ味で音に変化が生じる」と閃きました。 『安来鋼、安来白一鋼にたどり着く』 調べてみると、錆びる鋼、「*安来鋼」の刃物が切れ味に優れていることがわかりました。その中でも日本刀に使われる玉鋼に一番近いとされる「安来白一鋼」にたどり着きました。これを探すのが大変だったんですが、ネットオークションで刃物のカテゴリーではなく骨董品で売ってるのを見つけたんです(笑) 『ハンダがのるスピードが速い』 この白一のメスに変えてからハンダののるスピードが格段に上がりました。良いハンダ付ではハンダの「のりがいい」という表現を使いますがさらに先の感覚です。導体の表面をハンダが「ぴゃーっ」とストレスなくハイスピードに滑って行くんです。この感覚は導体の表面を鏡面加工を施したStageシリーズで覚えがありました。ここまで導体の鏡面加工精度を上げているのは、未だ耳にしたことがありませんので、他に経験された方はいないのではないでしょうか? 元々はエナメルを残しのないように剥ぐ目的でやっていたはずが、導体を(新品状態より)きれいに磨き上げていくという役割に変わっていったのです。その効果はピュアで澄み切った純度の高いサウンドとして現れました。さらに鋼の探求を続け現在は他の鋼(KS-Remasta No.4)を採用し、それを研ぐ砥石、工程も研鑽を続けています。余談ですが「鏡面加工精度をあげた導体**」って、手袋して触ってもドキッとするほど「しっとり」した感じなんです。 ―結局、レコードを聴いた時に、聴こえなかった音が聴こえるってことですか? もちろんそれもありますが間接音、雰囲気、気配といった言葉で表現しにくい微細な成分が豊富に浮き上がってきます。導体を研ぎ澄まし磨きあげていくというのは限りなく微小な信号を通過させるのに極めて有効な技術と確信しています。逆に言えば凸凹の導体では微小信号が迷子になって通過しにくいと推測します。私にとってアナログの最大の魅力は限りなく微細なことをどこまでも「無かったことにしない」ってことです。カートリッジがリード線の加工精度を上げると、どんどん良くなっていくんです。愛機(カートリッジ)は、それだけ音を拾っているということなんです。そして磨けば磨くほど、なんか面白い事になるんです。これからも「これ以上できない」ってものを作り続けたいです。 ―あなたにとってアナログレコードとは何ですか? https://youtu.be/IiKTHBWe60o * 雲伯国境地域「現・島根県/鳥取県境」における直接製鋼法で出来た鋼の総称。古来の正統的和鋼として、同地方の奥出雲町では年に数回の古来の「たたら吹き」製法により玉鋼がつくられ日本刀の原料として全国の刀匠に配布されている。 **KS-Remasta ではヴィンテージワイヤーを使ったVWSシリーズの他、導体の表面を手作業による鏡面加工を施したStage シリーズがラインナップされている。 VWSシリーズで導体の表面を刃物で磨き上げるのはハンダ付けするわずか2mm弱の部分。 インタビュー後記取材当日、バス停までわざわざ迎えに来ていただいたうえに、思いがけず"絶品牛すじカレー"をご馳走になりました。隠し味に牛骨テールを細かく砕いて入れているとか。きめ細やかなお心遣いと"ひとひねり"がそのままモノづくりに反映されており、手持ちのカートリッジに柄沢さんのリード線をつけて聴いたところ、上品な音に変わったと実感しました。 柄沢伸吾(からさわ・しんご)1966年12月生まれ東京都立小石川工業高校 電気科 卒業電気工事店 就職2012年1月に、シェルリード専門工房 KS-Remasta(ケーエス・リマスタ)を開業 シェルリード専門工房KS-Remasta ホームページhttp://www.ks-shell-lead.biz/シェルリード専門工房KS-Remasta ハイエンドシェルリード専門ネットショップhttps://ks-remasta.welf.biz/Twitterhttps://twitter.com/KsRemasta...

アナログレコードを愛する人々第8回 PLATANUS フォノカートリッジデザイナー 助廣 哲也 氏

第8回は、自身のオリジナルブランド「PLATANUS」でフォノカートリッジデザイナーをされている助廣哲也氏へのインタビューです。音楽を聴く際には「オーディオ機器を感じたくない」とのことです。 『父にもらったアナログプレーヤーで』 ―アナログレコードに興味を持たれたのはいつ頃でしょうか? 興味を持ったのは、、子供の頃はまだギリギリアナログレコードが普及している状況だったので、家に(レコードが)あったり姉が貸レコードを借りてきたりしていました。9つ上の姉がおりまして。小5ぐらいになって父にアナログプレーヤー一式をもらいまして、その頃からですね。 ―初めてご自身で買われたレコードは? 荒井由実の1stアルバムですね。フリマのようなところで買いました。 ―DJもされていたって本当ですか? 本当に昔、若い頃にやっていました。渋谷の宇田川にたくさんレコード屋さんがあった頃はよく友人とレコードを買いに行ったりしていました。 ―レコードをどれぐらいの頻度で聴かれていますか? うーん。3日に1度は製品の試験も兼ねて。 ―一回にどれくらい聴きますか? どれくらい聴いているんだろう。何時間も聴きますね。何個もまとめて試験するので。 ―仕事できくレコードとプライベートできくレコードでどのような違いがありますか? プライベートですと一日中聴いていますね。半分仕事の頭で聴いてるところもありますけどね。境目がないので。何かしながらは聴きません。ずっとスピーカーの前で聴いています。何かしながらの時間はレコードを聴く時間には入れていません。 ―聴くときは聴く!と決められているのですね。でも、疲れませんか? 疲れます(笑)。 ―プライベートで聴かれるレコードはどんなジャンルがありますか? なんでも聴くんですけれど…古いジャズも聴きますし…あまり新しいものはないので。POPSも聴きますし。クラシックもありますし、いろいろですね。製品開発の時はどんなジャンルも聴きますね。 ―製品開発試験で聴くのに必ず外せないジャンルなどはありますか? ジャンルというか、曲のこの部分がどういう風になって欲しい、みたいなのがあるので。そういうのの聴き分けがしやすいものを自然と聴いていますね。仕事では。 ―レコードは何枚ぐらいお持ちですか? ここ(自宅)には本当に少ししかないんですけど。何枚あるんだろう。実家にほとんどおいているので。数えたこともありません。万はないと思いますけど、千はあると思いますね。 ―レコードはどこで買うんですか? レコード屋さんですね。あとはハードオフとか。ネットでも買いますね。 『何が求められているのかを研究』 ―お仕事の内容についてお聞かせください。 フォノカートリッジやトーンアームの製造、設計が主です。 ―トーンアームの設計ってどこから考えるのでしょうか。例えば形から入るのか性能から入るのかどちらでしょうか。 性能の方ですかね。 ―カートリッジ開発は趣味で始められたんですか? カートリッジのパーツを製作する会社にいたので部品は作っていましたが、製品にまではしていませんでした。最終的にどういう使われ方をするのか知っておかないといけないなと思いまして、僕は勝手に色々設計したり実験したりしていました。言われたことをしているだけじゃトンチンカンなことをしてしまっても気づけないなと。何が求められるのか、部品の精度とかクオリティーとか。そういうのが気になりだしてそのあたりから自分で研究し始めましたね。 ―ご苦労話を教えてください。 苦労話は、、お金がかかる(笑)。部品が高いですね。数が出るものじゃないので、削り出しで作ったり。なので在庫がはけるまではドキドキですよね。個人ですから。 ―プラタナスファンの方もいらっしゃると思うのですが、助廣さんが出されたカートリッジなどは問答無用で全部買う、みたいな方もいらっしゃいますか? いらっしゃるのかどうか…(笑)。 工房の様子。細かい部分も綺麗に整頓されており助廣氏の人柄が窺える。 ―完全フルオーダーメイドを作って欲しいというような要望はあるのですか? そうですね。滅多にいないですけども。海外のお客様はそういう方いらっしゃいますね。 ―部品とかも一個から発注になりますよね。そうなるとお値段がすごいことになりませんか? そういう方は値段は気にしないみたいです。いくらかかってもいいから誰も持っていないものが欲しいという方はいらっしゃいますので。 ―今までで作られてきたカートリッジはいくつくらいあるのですか? プラタナスで出したカートリッジは2つしかないですけど。設計だけとか製造だけ担当したものを入れるとかなりありますね。 ―一年間でどれくらいの数のカートリッジを発売されるのか決めておられますか? 特に決めていないですね。自分の名前で出すものに関しては。あまり商売っ気がないと言われるんですが。 ―お仕事が重なって忙しいシーズンもあるんですか? 大変なシーズンはありますね。だいたいオーディオショウの前なんかは、部品がギリギリになったりするので。ミュンヘンのショウだったり、アメリカのショウだったり。 ―そういう時は寝ずにやったりもするんですか? それをやってしまうととクオリティーに問題が出る場合があるので寝ます、ちゃんと(笑)。普段から詰め込まないようにしているので、忙しいときにちょうど良くなるくらいにしないと、焦ってやって失敗すると、お金が…途端に…(笑)。 『オーディオ機器に存在を消してもらいたい』 ―ところでMCカートリッジのマーケットってどんな感じでしょうか。 アメリカが大きいとは聞いています。アジアは最近伸びていますね。(アジアは)レコードで音楽を聴くことも普及してなかったので、最近になって趣味のオーディオが出てきたときに、逆に今アナログが新しいメディアのような扱いを受けていると聞いたことがあります。 ―そうなると若い方の方が多いのでしょうか。 そうですね。お金を持っている若い方が多いので。 ―日本とは逆のような感じがしますね。 日本は40年くらい前のオーディオブームの頃に若かった人が、お年を召されて、ちょっとお金に余裕が出てきて、アナログ回帰現象が起きていますね。 ―カートリッジを設計されるときに、こんな特徴を持たせようというようなことを意識されて開発されるんですか? プラタナスに関していえば、僕の趣味を反映しているようなところがあります。オーディオ機器を楽しむというよりはオーディオ機器に存在を消してもらいたい願望があるので、そっちの方向ですかね。 前職の退職金がわりにもらったというトーンアーム。 ―オーディオ機器に存在を消してもらいたいとはどういう意味ですか? オーディオで音楽を聴いているな、というのが好きな方もいらっしゃると思うのですが、そうではなく、音楽と対峙したいのです。僕はあまりオーディオ機器を感じたくないのです。趣味、スタイルは様々あると思うんですが、僕は基本そうなんです。 ―開発製造のポリシーみたいなものはありますか? ありきたりなんですけど、ユーザー目線ですかね。最終的に買って使ってくださる方のことを一番考えています。その値段でこのクオリティで自分は買うか、と。安いものでも24万とかするわけで、、MacBookとか買えちゃうんですよ(笑)。MacBook買わないでレコード針に24万出すってのは、すごいことだと思うんですよ。そのクオリティがあるかどうかはいつも考えています。高そうにして高くすれば売れるから売るっていうことじゃないんですよ。 ―PLATANUSの名前の由来は? 元々の住まいの最寄駅がすずかけ台という名前だったんですよ。スズカケノキの木はプラタナスの木なんですね。独立した時に屋号を決めていなかったので、領収書を切る時に、助廣で、って言っても通じないんですよ(笑)。めんどうくさいなと思って、プラタナスにしとこうと思ってとりあえず決めたものがブランド名になりました。 『"もの"としての魅力』 ―今世界的にアナログブームがきていますが、この流れについてどう思われますか? うーん。そうですね。あんまりその影響を感じたことがないんですけど。データだけで音楽のやりとりができる時代になって、あえてアナログに注目が集まるというのは、"もの"としての魅力を感じているんだろうなと。データの入れ物としてみた場合には絶対デジタルの方が優秀なので、そこじゃないんだろうなと思っています。ジャケットもこんなデカイですし。手にできますからね。そういうところが注目されているのかなと思ってみています。 ―今後の流れはどのようになっていけば良いなと思っておられますか? アナログレコード自体は全くなくなることはないと思っているので、趣味のものとしてしぶとく残ってもらえたらいいなと。すでにそのようになっていると思うんですけど、より多くの人に楽しんでもらえるといいなと思っています。 ―最後に、あなたにとってのアナログレコードとは? https://youtu.be/nU1PGXKaZ6k インタビュー後記閑静な住宅街の一角にあるシンプルかつおしゃれなご自宅兼工房は、まるでアトリエのようでした。インタビュー後、PLATANUSのカートリッジで荒井由実さんの「ひこうき雲」を聴かせていただくと、「ユーミンはサ行が歪みやすいので検査用レコードにもってこいなんです」と、真剣な表情で聴く姿にオリジナルMCカートリッジへの情熱と、とことんユーザー目線に拘られる姿勢を感じました。 助廣哲也(すけひろ・てつや)1979年 東京生まれ。幼少の頃より機械の仕組みや音にまつわることに興味を持ち、楽器作りやフィールドレコーディングに夢中な少年時代を過ごす。中学在学時にバンド活動を始めると、関心の幅は音だけでなく音楽にまで広がる。高専で電気工学を学んだのち、2002年よりハイエンドオーディオ機器の受託製造会社に勤務。トーンアームやフォノカートリッジの設計製造に携わる。2012年に独立し、PLATANUSを設立。PLATANUS:http://platanus.tokyo...

名人の秘密治具(2)

前回に引き続き、Wood Carving Cantilever商品に使われる専用治具をご紹介します。 時計旋盤とよばれるこの機械は、その名の通り本来は時計の部品を作るための機械です。こちらを使ってWood Carving Cantilever商品の木製カンチレバーを加工しています。 もともとはレコード針のホルダーを加工する目的で購入したのですが、現在ではその作業専用の治具が作られていて、この時計旋盤の出番はそういった治具を作る時くらいとなっていました。   そこでWood Carving Cantilever商品の開発者がこの時計旋盤に手を加えて、木製カンチレバーの加工に使い勝手のいいように改良してしまったのです。 木材を削ってカンチレバーを作るのですから、とても細かい作業ということを想像してみてください。 Wood Carving Cantilever商品の発売まであと少しです。 お楽しみに。 ...

JICOが聴けるステキなお店 #1 神田 「Root Down」

神田とはどんな街のイメージをお持ちだろうか?東京をまだよく知らない頃、そこは古書店街であり、神田明神の門前であると勝手に思っていたが、さにあらず。オフィスと予備校があり、サラリーマンにやさしい居酒屋の街でもあった。 JR神田駅東口から徒歩約3分。神田「Root Down」は独特の風格を湛えてそこにあった。マスターの吉川徹氏曰く「折角のご来店、喜んで帰って頂きたいというのが基本にあります。自分がお客さんとして、居心地の良い空間を逆算して考えて作っています。」 https://youtu.be/Wg-EL8eJkxU その日の雰囲気で選曲するというレコードはジャズ、ブルース、ソウル、ラテンが中心。ジャズだけで5,000枚を優に超えるコレクションである。 2008年12月、神田駅に近いビルでオープン。そのビルの建て替えに伴い2018年10月、旧店舗のインテリアほぼそのままに現在地へ移転した。 アメリカのゴスペルシンガーSam Cooke「A Change Is Gonna Come」の1番の歌詞。 40代以上のひとり客が多いとのことだが、「レコードを見たことも聴いたこともない、普段デジタル音源をイヤフォンで聞いているような人に是非うちの音を体験して欲しい」と語る吉川氏。「この店のオープン時に初めて音を出した時、あぁ、こんな音がするんだと涙が出ました。」 おすすめは「神田ハイボール」と「Funky Ginger」 システムはターンテーブルがDENON DP-500M、真空管アンプは音のエジソン社製 MODEL2000MKⅡ。スピーカーも同社製のプロミネント。SHURE社のMMカートリッジを採用。「MMは荒っぽい感じがするビートの効いた音楽に向いていると思います。」 JICOのSASの印象を伺うと「以前、ネットオークションでSHURE V15 TypeⅢの中古の交換針を1万円ちょっとで買ったことがありますが、経年変化なのか、すぐに折れたんです。その頃お客さんからJICOの事を聞きました。うちは最初からSASです。今は4本くらいサブで持っています。私はオリジナルより良い音だと思います。」 https://youtu.be/7SIT91vxHTQ   Cafe & Bar「Root Down」店名は小学校五年生の時に初めて買ったJimmy Smithのレコードから。〒101-0035 東京都千代田区神田紺屋町30番地S-Grace101  tel 03-3252-498218:00~24:00   日・月休【http://www.rootdown.jp】 このコーナーでは JICOのレコード針をお使いのお店をご紹介させて頂いております。自薦他薦を問いませんので、どうぞご応募くださいませ。ご応募はこちらから↓日本精機宝石工業(株)東京支店メールアドレス:inquiry@jico.co.jpメールタイトルに「JICOが聴けるステキなお店掲載希望」と記載の上、ご応募ください。   ...

アナログレコードを愛する人々第7回 DJ SHARK 氏

第7回は、長年HIPHOP DJとして活躍されているDJ SHRK氏にインタビュー。DJ修行のためにニューヨークに住まわれたことがあるそうです。 『いまだに納得できる音が出せていない』 ―レコードブームの再来と言われていますが、以前のブームとは違いますか? 間違いなく違うと思います。いろんな人がレコードを楽しんでいると思います。DJ機器などは本当に好きな人だけが買っている。それが僕はすごく嬉しいです。僕自身、昔は、そんなに音にこだわっていなかったんですが、今は特にアナログで回す時は気にします。 ―具体的にどういった点を気にしますか? 音の出方です。イベントなどで(レコードを)回す時は、会場の環境にもよりますけど、雑音の多い所だと「音が出てればいいか」と思うんですが、クラブやリスニング会場のような、皆さんが真剣に聞き入られる所だと全然納得できないです。全部自分の機材を持っていきます。それでも自分の納得できる音が出せていないんです。 ―DJに興味を持たれた経緯を教えてください。 若いときに京都の三条にあった「MAHARAJA CLUB」へ踊りによく行ってたんです。当時は滋賀に住んでいたんですけど、あるとき滋賀で大きなイベントがあったんです。そこでDJを見て、「なんやこれは!!」と思いすぐにDJ機器を買いに行きました。DJの真似事みたいなことを家でずっとやってましたね。 ―レコードを収集されだしたのも、その頃ですか? 本格的に始めたのは、その頃からですね。それまでもレコードは持っていましたが、全くジャンルが違うレコードを買っていました。 『やっぱり家とは違うなと』 ―人前で初めてDJプレイを披露されたときのことを教えてください。 学校を卒業してすぐ、滋賀から京都に出てきて働きながら自分で*ミックステープを作り京都のクラブへ売り込んでいました。そしたら電話が掛かってきて、そのクラブで面接みたいな感じでDJプレイを見てもらいました。その後いきなりお客さんの前でDJをすることになり、ブルブル震えながらプレイしました。 ―その日を終えられて、いかがでしたか? ものすごく楽しかったですね。やっぱり家とは違うなと(笑)。お客さんに「選曲がいいな」とか「良かったよ」と言われたりしてめちゃくちゃ嬉しかったです。 ―DJとして本格的にやっていこうと思われたのは? これで食べていこうとかは考えていなかったです。昼間は働いて週末にクラブでDJをするって感じでした。最初は無名でしたのでギャラも少なくて、昼間働いたお金で少しずつレコードを買ってました。 スタジオの一角にあるギターと録音機材。 『選曲にはその人のセンスが出る』 ―曲と曲をつなぐ時の選曲はその人のセンスが出るものなのですか? 大いに出ます。リズムが大事なんですよ。今かかっている曲から次はこの曲をかけたらいい感じになるんじゃないかとか。ただレコードの場合は、その時に持ってるレコードの中だけでしか選べないんですが、PCの場合はいっぱい曲が入っているのでね。僕なんかは曲名で覚えてなくてレコードジャケットで曲を覚えてるんですよ。たまに違うレコードが入ってるんでその時はビビりますけど(笑)。 『ターンテーブルはスポーツカーのようです』 ―PCを使用したDJが大多数になって来ていますが、ご自身はいかがですか? 私もTPOに合わせてPCで回す時があります。最初の2年ぐらいはなかなか慣れなくて外に持ち出せなかったですね。ターンテーブルとPCでは全く違うんですよ。面白さではターンテーブルの方が勝りますね。力量がそのまま出ます。やっぱりターンテーブルでレコードを回すのは難しいんですよ。 PCとターンテーブルでは0.数ミリの間のズレがあってデジタルの方が反応が遅いです。車のハンドルに例えるとPCは普通の乗用車でターンテーブルは遊びが全くないゴーカートやスポーツカーのようです。 ―レコードは何枚ぐらいお持ちですか? 今は最盛期の半分くらいしか無いと思います。全部ニューヨークに持って行き、あちらでもレコードを沢山買いましたが、帰国するときに知人にほとんどあげました。今は五千枚ぐらいしかないですね。優に一万枚以上は買っていますが、僕は少ない方だと思いますよ。 ―SHURE社が昨年カートリッジから撤退しましたがカートリッジ(交換針)にこだわりがありますか? 最初はSHUREの44Gを使っていて、途中でOrtofonのコンコルドを使ったりしましたが。自分にはやはりSHURE M44-7が一番しっくりきます。 『単身、ニューヨークへ渡ったんです』 ―ニューヨークへ行かれたんですね? そうですね。京都でDJを始めたんですが、あるとき地元の滋賀へ戻ったんです。 その頃はDJの大会によく出場していて、1996年のDMCまで出ていました。しかし、大会ばかり出ていたら、選曲がわからなくなったんです。クラブでお客さんの雰囲気を感じることができなくなってしまって。壁にぶち当たったんですね(笑)。ちょっと勉強したいなと思いまして。それまでにニューヨークへは何度か行っていたんですが、行くのと住むのとは違うと思い、単身ニューヨークへ渡ったんです。5年の間にクラブ、イベント、ショータイムなど色々な経験をさせてもらいました。 ―SHARKさんの選曲は、やはりニューヨークの影響が大きいですか? やっぱり大きいですね。帰国当初はかなり影響を受けていたと思います。今は好き勝手にやらせてもらってますけど(笑)。 『ダンスの世界に近付いている」 ―現在、ご自身を取り巻く環境についてお聞かせください。 帰国した当初はDJとしての仕事が全くなかったですが、去年ぐらいから色々とお声掛けいただいてます。特にTechnicsさんが復活(SL-1200/7を発売した)したのが大きいです。これからの時代は、明け方までやってるクラブとかじゃなくて、健全な昼間とかの野外イベントで本当に音楽を楽しみ、本当に音楽が好きな人が集まるようじゃないといけません。アメリカのLAでも0時までですよ。でも、最近は少しずつですが小さい子たちがDJに興味を持ち始めているようなんです。DJはちょっと遅れたけれども、ダンスの世界に近付いてきているんじゃないかなぁと思うんです。キッズダンスのように学校の授業にも入っているので。親もダンススクールに子供を通わせるように、これからはDJスクールへ通わせる親も増えるんじゃないですかね。 ―最後に、これからDJを目指される人に対して 自分が楽しいと思うことをやるのが一番だと思う。何事も壁にぶち当たると思うんですよ、その時に乗り越えるには好きなことじゃないとしんどいと思うんです。ニューヨークに住んでみたら全然違ったんです。”ノリ”が全然違った。僕はアメリカの人たちの技を盗もうと必死でしたが、彼らは個性を出そうと必死でしたね。なんでも必死にならないとダメかなぁ。 https://youtu.be/Z2QRmJ_Q-AA *既存の楽曲にリミックスなどを施し、それらを繋げて独自に作成した楽曲集。媒体がテープであるとは限らない。 インタビュー後記SHARKさんのDJプレイはとても繊細な指の動きで、まるでピアノを弾いているようでした。ご自宅の一角をご自身で改装されたスタジオはSHARKさんの音楽に対する姿勢そのもので、繊細でいておしゃれであり、かつ質実剛健な印象を受けました。音を聴く時の、一点を見つめる鋭い眼光から音楽への真摯な心意気を感じました。 DJ SHARK (でぃーじぇい・しゃーく)90年代初期からDJ、ターンテーブリストとして活躍し、96年Japan DMC Battleのウエストコーストチャンピオンに輝く。Technicsのターンテーブル、ミキサーの開発に協力し、企画から参加したTechnics初のHIPHOPDJミキサー『SH-1200』は、今も世界中のDJ達に愛されている。1999年、初の自身のアルバム"Inqbation"をMirror Ball/RC Recordsよりリリース。アフリカバンバーダの率いるZulu Nationのインターナショナル・ヒップホップ2000年の枠で2位に選ばれる。プロデュース業も幅広くこなし、レゲエやロックの方面でもプロデュースやリミックスを行う。ライブではバンバーダやQ-bert, Z-trip,Five Deezなどのオープニングも務め、2002年にはテクニクスの30周年イベントでスペシャルゲストとしてプレイ。その後ニューヨークに渡り、オールドスクールマンスリーパーティ『Back in da Days』をブルックリンで主催、数々のHIPHOPレジェンド達との共演を果たす。(GrandMaster Mell Mel, Grand Wizard Theodore, DJ Spinna, Large Professor, Rob Swift, DP-One, Jeru the Damaja等)日本へ帰国後、Back in da Days JAPANツアーを行い、NYよりJeru the Damajaをゲストに全国6カ所にBrooklyn旋風を巻き起こした。http://www.youtube.com/watch?v=B0D4Gxqfp9I2010年、NY生活の集大成的アルバム"Back in da Days VOL.1"、2011年には『Back in da Days Vol.2』をNORTH SETZよりリリース。Grand Master Flash京都公演、UMB (Ultimate MC Battle)@Liquid Room、B-BOY商店街@彦根、Keep it real主催 "Fun Kir"@横浜など、活動の幅を広げている。 LINK Twitter【 https://twitter.com/DJSHARK_JAPAN 】Instagram<DJ SHARK>【...

「DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS 2019 FINAL」レポート

8月24日にで開催された「DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS 2019 FINAL」に行ってまいりました! 当社は今大会のスポンサーをさせて頂きました! 当社のバナー。階段の目立つ所に貼っていただいておりました。 この大会はバトル部門とシングル部門にわかれており、それぞれの優勝者はロンドンで開催される世界大会の出場権を獲得します!! まずはバトル部門から。出場者は以下の8名です DJ EiON, DJ KENGO, DJ NE-NYO, DJOM, DJ YONE, DJ YU-TA, DJ 松永, DJ SHUNSUKE (敬称略) DJ SHUNSUKEはディフェンディングチャンピオンとして臨みます。人気者のDJ 松永の入場には一際大きな歓声が。 トーナメント表はこのようになりました。3回勝ち抜けば優勝です。 1回戦第1試合は DJ EiON 対 DJ NE-NYO! バトル部門唯一の女性DJとして会場を盛り上げましたが、 「パワーで圧倒する」と宣言したDJ EiONが勝利! 2回戦に進出です。 第2試合は DJ KENGO 対 DJ 松永! 煽るような視線を相手に向けるDJ 松永。 DJ KENGOが対戦相手の相方に変身し動揺も誘うも、、、 当人は意に介さず。 会場を盛り上げた一戦はDJ 松永に軍配!  第3試合は DJ OM 対 DJ YU-TA! 相手を煽らないDJ OMに対し、 イケイケな感じのDJ YU-TA。 接戦を制したのはDJ YU-TA! 第4試合は DJ YONE 対 DJ SHUNSUKE! DJ YONEも素晴らしいプレイでしたが、 デフェンディングチャンピオンのDJ SHUNSUKEが圧倒! 続いての2回戦第1試合 DJ EiON 対 DJ 松永 、第2試合 DJ...