アナログレコードを愛する人々第23回 西川博史(Alex)

2024-07-26

 

アナログレコードに携わっている方にインタビューする企画です。

第23回は、歯科医師であり、音楽ユニット”COMODO”でも活躍中の 西川博史(Alex)さんにインタビュー!

—まずは、西川さんの現在に至るまでの経歴を教えてください。

中学生のときはクラシックが好きでした。
親がジャズやクラシックのレコードを集めていて、それを小さい頃からよく聴いていました。

その後ヒップホップを聴くようになって、ミュージックビデオのなかでレコードを擦る(スクラッチする)
シーンがあって「これをやりたいな」「レコードを擦るとこんな音が出るんだ」と思ったんです。
高校受験の合格祝いに札幌のCISCO RECORDSでターンテーブルセットを買って、
それからはずっとスクラッチの練習をしていました。

スクラッチの練習をしていると、
だんだん他の高校のヒップホップが好きな学生とも仲良くなっていきました。
函館は狭いので全員知り合いになるんですよ(笑)

上の学年のクラブやバーをやっている人や、ダンサーをやっている人たちとも知り合いになって、
その流れで「パーティーをやろう」という話になったんです。

高校2年~3年の頃の話ですけど、それから何か月かに1回、
函館でヒップホップのパーティーを自分たちでやっていましたね。

—高校生でパーティーを主催するのは早いですね。

そうですね。
夜遅く…といっても23時とか24時くらいまでの可愛いパーティーでしたけどね(笑)

それから大学入学をきっかけに上京したんですが、
全然知り合いがいなかったので、渋谷のSHIFTYというクラブに
自分のレコードを持って行って、「ちょっとでもいいからDJさせてくれ」って話をしたんです。

実際にDJをやらせてもらって、そしたらすごく盛り上がって、レギュラーDJになりました。

その頃に、フレンチポップという1960~1970年代とかの
フランスの古い音楽が好きになったので、フランスのレコードをDJでかけていました。

ご自宅の作曲スペース兼DJブース
DJブースはスタイリッシュに統一されている

 

—当時、フレンチポップをかけるDJはきっと珍しいですよね。

フランスの音楽に関する情報が少なかったですからね。

そうやってフランスの古い音楽のレコードを集めているうちに、フランスのヒップホップに出会って、
それからはフランスのヒップホップと普通のヒップホップを混ぜるようなDJスタイルになりました。

当時はMyspaceが流行っていたので、自分のミックスをMyspaceにアップロードしてみたら、
本国(フランス)のアーティスト本人たちに届いて、直接連絡が取れるようになったりもして。

そんな感じでDJをやっていたら、プラスチックスという日本のバンドのボーカルの中西俊夫さんが
パーティーに遊びに来てくれるようになって仲良くなったんです。
それで、プラスチックスのライブの前座でDJをするようになりました。

それからテイ・トウワさんを紹介してもらって、
「ミックステープ送って」と言われたので送ったら、
すぐに「じゃあ次の(テイ・トウワさんの)パーティーに出てよ」という話になったんです。

僕と、DJ HASEBEさん、スチャダラパーのSHINCOさん、
RIP SLYMEのDJ FUMIYAさんとかで、テイさんのパーティーに出演しました。

—フランスのヒップホップを好きになったことで、活動の場が広がっていったんですね。

色々な音楽を見つけていくうちに、DJ MEHDIという、
エド・バンガー・レコードからリリースしている
ダフト・パンク周りのDJを見つけて、彼のDJがめちゃくちゃカッコ良くて。

あまりにカッコ良かったので、麻布十番にあったWAREHOUSE702というクラブに
自腹で彼を呼んで、パーティーを開催しました。

その日は、渋谷のLA FABRIQUEというクラブでもスティーヴ・アオキがDJをやっていたので、
面白いことに興味がある東京中の人たちが、
LA FABRIQUEと自分のパーティーとを行き来してくれてとても盛り上がりました。

—それはいつ頃の話ですか?

今から20年くらい前ですね。
今は、クリニック業(歯科医院)をしながら、自分で曲を作ったりDJもしたりしています。

クリニックの診療室はスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』がモチーフだそう

 

—ご自身で作曲もされるんですね。

”COMODO”(コモド)という2人組のユニットをやっています。
ユニット名は、イタリア語で「ゆっくり行きましょう」とか「気軽に」といった意味の音楽用語からつけました。

普段CMとか映像の音楽を作っている、東京音楽大学の講師でもある藤巻浩さんと、
僕の2人組で一緒にやっています。

これまでにBRUTUSやiHerbの広告用の曲などを作っていて、
オファーがあればいろいろ曲を作っています。

作った曲のうちの一つに、漫☆画太郎さんが「ガタロー☆マン」という名義で
子供向けに漫画とかアニメを描いているんですが、
そのシリーズの一つの『おだんごとん』という絵本の広告用音楽も僕たちが作りました。

ガタロー☆マンの『おだんごとん』

 

—すごいインパクトの絵本ですね(笑)

漫☆画太郎さんの作品が大好きなので、
オファーをいただいたときはめちゃくちゃ嬉しかったですね。

絵本を読んですぐ曲を作って送ったら一発OKが出たんですよ。
画太郎さんってすごく厳しいらしくて、普段は全然OKが出ないらしいんです。

だから、マガジンハウスの方が
「一発OKでした!こんなの初めてです!」ってびっくりしていました(笑)

ヒップホップとテクノをミックスさせた感じの
変な曲に仕上がっているので、是非聴いてほしいです。

聴いたら「ああ~これだよね、これしかないよね」ってなると思います。

—COMODOの曲はどこで聴けますか?

CDとかはまだ出していなくて、
COMODOのInstagram(@comodo1979)に曲を載せています。

チェックしていただけたら嬉しいです。

 

クリニックにもなんとDJブースが
学生時代から愛用しているというターンテーブル

 

—ご自宅だけではなく、
クリニックにもターンテーブルが置いてありますね。

クリニックにあるターンテーブルは、
学生時代に買ったVestaxのターンテーブルを今も使っています。

たまに知り合いが、クリニックの営業時間後にDJの練習をしにくることもありますよ。

—クリニックの内装のこだわりを教えてください。

待合室や診療室の音響やインテリアにこだわっています。

診療室には、GENELECの音が好きなので、
クリニックを開業した当初から、GENELECのスピーカーを置いています。

待合室のスピーカーはTaguchiのものです。
職人が全部木で手作りしているスピーカーなんですよ。

インテリアは、僕が好きなアート作品を置いています。

GENELECのスピーカー
Taguchiのスピーカー

—影響を受けた人はいますか?

プラスチックスの中西俊夫さんと、テイ・トウワさんです。

後はやっぱりヒップホップが一番好きなので、
ア・トライブ・コールド・クエストとかQティップも好きです。

日本のアーティストだと、
細野晴臣さん、スチャダラパー、TOKYO No.1 SOUL SETとかが好きですかね。

 

—レコードは普段どれくらい購入されますか。

月に10~20枚くらいですね。

DiscogsやAmazonなどのネットで買ったり、
渋谷や下北沢のレコード屋さんで買ったりしています。
気に入ったら買うって感じですね。

トータルだと4,000~5,000枚ほどレコードを持っていると思います。

—最後に、今後の展望を教えてください。

僕は睡眠学会の歯科専門医なんですが、マウスピースとかを使って、
いびきにお悩みの方の睡眠治療もクリニックで行っています。

それに関連して、「人を眠らせる周波数の音楽」について
ある大学と一緒に研究を進めているんですが、
僕は作曲もしているので、いつか「人を眠らせる音楽」が作れたらなと思っています。

日本には睡眠障害の人が約6,000万人いると言われています。

この6,000万人の人たちが、
「これを聴けば眠れる」っていう曲を作りたいです。

「音楽で睡眠にアプローチしていきたいな」「医療から音楽に攻めたいな」
というのが今後の展望ですね。

—睡眠のための音楽というのは興味深いですね。

まだ始まったばかりの研究ですが、睡眠用の曲で特許とか取れたらすごいですよね。

「車の運転中は絶対に聞かないでください」って注意書きして(笑)

まずは研究結果を出して、そして睡眠のための音楽を作りたいです。
睡眠の研究を活かして面白いことが出来そうなので、今後を楽しみにしていてください。

 

あなたにとってのアナログレコードとは?

 

【プロフィール】

西川博史(Alex)

にしかわデンタルクリニックにて院長・歯科医師業のかたわら、
藤巻浩氏との音楽ユニット「COMODO」として作曲も手がけるアーティスト。
「Alex」というネームでDJも行うなど、その活動は多岐にわたっている。

にしかわデンタルクリニック
https://nishikawadc.com/

■診療時間
月・火・木・金:<午前>9:00~12:30 <午後>14:00~19:30
水:<午前>9:00~13:00
土:<午後>12:00~17:00
※日、祝日は休診日

■住所
〒154-0015
東京都世田谷区桜新町1-11-5 HANAKIKUビル2階
TEL:03-3429-0418

■アクセス
東急田園都市線 桜新町駅から徒歩1分
サザエさん通りに入ってすぐ